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顧客の100%が外資系企業である税理士山條隆史の解説です。

本国から出向外国人の確定申告とローカル採用外国人の年末調整、社会保険・年金

外資系会社の日本子会社を設立するに際して、代表者となる日本の社長は、通常、(1)本国から社内の人を日本に出向させる、(2)業界に精通した日本人を採用する、(3)業界に精通した日本に住む外国人を採用するの3つのいずれかとなります。

例外的には、税務上の目的から、日本子会社スタッフを登記上の代表者とはせず(=取締役として登記せず、社長とも呼称しない)、Country Manager等の呼称を使って日本拠点の代表であるということを対外的に示している場合もあります。

本稿では、外国人を日本子会社の社長に据えるに際して、税務や入国管理法の観点から留意すべき事項について記します。

<目次>

1.一番大事なのは、就業ビザ

外国人が日本で働くためには労働許可証(=就業ビザ)が必要です。就業ビザには、企業内転勤、技術・人文知識・国際業務など14の分類があります。

就労や長期滞在を目的とする場合 | 外務省

親会社から出向で日本子会社に送り込まれる場合は企業内転勤ビザもしく経営・管理ビザを申請します。いずれの種類のビザになるかは、各社の状況(=出向者の出向元企業における在職期間や日本子会社への投資額等)により変わってきます。

2人目以降もしくは、日本国内で他の企業に勤務している者を雇う場合には、技術・人文知識・国際業務ビザが多いです。

※ビザ申請は、こうした業務を専門とする取次申請行政書士(=Immigration Lawyer)に相談・依頼します。

www.gyosei.or.jp

なお、配偶者が日本人である場合には、配偶者ビザとなり、就業に制限はありません。

2.出向外国人の課税と所得税の確定申告

(1)出向外国人への給料の支払い方

出向者(Expatriate)への給与支払は、国外払い給与として本国の銀行口座に振り込まれる給与と日本での生活のために日本国内の銀行口座に振り込まれる国内払い給与の2つがあります。

国外払い給与はその国の税法規定によって扱われますが日本の所得税の規定による源泉徴収は対象外です。国内払い給与のみ支払い時に日本の所得税の規定により源泉所得税が給与支払者によって源泉控除されます。※国外払い給与は支払い時の源泉徴収はありませんが、所得税法の規定に従い、日本で課税されます。

(2)現物給与も課税の対象

日本での住まいが社宅として貸与される場合、全額会社負担であれば、家賃の100%が経済的利益の供与として給与に上乗せして課税対象とされます。

日本の所得税法に、所定の計算による本人負担分を徴収している場合には経済的利益とされないという規定があります。通常は、この規定が適用できるような社宅規程の定めとそれに従った運用をし、課税所得が増えないような対策をします。

No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|源泉所得税|国税庁

No.2600 役員に社宅などを貸したとき|源泉所得税|国税庁

社宅に付随する水道光熱費や電話代等は個人の負担となりますが、これを会社負担としている場合は全額経済的利益の供与として扱われることになります。

同様に、日本での税金(所得税や住民税)を会社が負担する場合も、経済的利益として課税の対象に上乗せされます。

(3)出向外国人駐在員の課税対象

1)日本に初めて入国してから5年以内の人

非永住者(Non-Permanent Resident)として日本国内源泉所得のみが課税の対象とされます。

日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である個人を非永住者といいます。そのため、たとえば、過去に留学などで日本に住んできた期間があればその日数も勘案して判定することになります。

2)日本に初めて入国してから5年超の人

永住者(Permanent Resident)として全世界所得(=国内源泉所得+国外源泉所得)すべてが課税の対象とされます。

3)国税庁の英語サイト

Information about Income Tax l National Tax Agency

(4)確定申告

国外払い給与や経済的利益がある場合には、年末調整だけでの課税関係の精算とはならず、確定申告をしなければなりません。

No.12018 Wage earners who must file a final tax returnwww.yamajo-tax.com

3.ローカル採用外国人の課税と所得税の精算

(1)ローカル採用外国人への給料の支払い方

通常は、日本人である他の従業員と同じ扱いと待遇です。

(2)所得税の精算

給与の収入金額が2,000万円以下であれば、年末調整により課税関係が清算され、確定申告は不要です。

確定申告が必要な方|確定申告に関する手引き等|国税庁

もちろん、医療費控除やふるさと納税の手続きのために確定申告することもできます。

No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|所得税|国税庁                            

税理士が自ら実践する!ふるさと納税の上手な活用法: H27年税制改正対応版 Kindle版

4.社会保険

(1)社会保険加入の義務

出向者や外国人・日本人の区別なく、国内払い給与があれば、社会保険料の支払い対象となります。

(2)年金保障協定がある場合

出向者の出向元国と日本国との間に年金保障協定があれば、本国と日本の二重払い回避や年金加入期間の通算ができる場合があります。

社会保障協定|日本年金機構

実際の適用や申請手続きは、社会保険労務士に相談・依頼することになります。

社労士とは|全国社会保険労務士会連合会

なお、 ローカル採用の外国人にはこの年金保障協定は適用されません。

www.japantimes.co.jp

(3)帰国後の年金の還付申請

外国人が日本で支払った年金は、帰国後2年以内であれば脱退一時金を請求すことができます。すなわち、日本国籍を有しない方が、国民年金、又は厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。

短期在留外国人の脱退一時金|日本年金機構

もしくは、支払機関等の条件が合えば、そのまま受給資格が満たされる時まで待って年金を受給することもできます。

なお、脱退一時金の還付に際しては日本国の所得税法の規定によって源泉徴収がされる場合があります。これは確定申告をすることで一部もしくは全額の取戻しも可能です。

 

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